5月号
2010年度 中学入学式
素晴らしい快晴にめぐまれ、洗足学園中学校の入学式がおこなわれました。
真新しい制服に身を包んだ新入生256名は、上級生に導かれて前田ホールに入場し、少し緊張した面持ちで着席しました。 10時ちょうど、ファンファーレが鳴り響き、式が始まりました。担任からの呼名では元気な返事とともに起立。学校長の式辞を受け、新入生が誓いのことばを述べ、洗足学園生としての第一歩を踏み出しました。

2010年度 中学入学式 校長式辞
鮮やかな華に囲まれた、春爛漫のこのよき日に入学式を迎えられたことを大変嬉しく思います。本日の入学式を迎えるにあたり前田寿一理事長をはじめ多数のご来賓の方、保護者の方にご臨席賜りまして心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。
ただいま、呼名がありました256名の新入生の皆さん。入学、おめでとうございます。
ご臨席いただきました保護者の皆さま、お子様のご入学おめでとうございます。
今、私、呼名に答える一人一人の顔をここからみていまして、皆様から、お預かりしたお子様を、この6年間、人間形成において、また、学力形成において、大切に育てていかなければならないと 身の引き締まる思いがしております。
新入生の皆さん、皆さんは、どのような思いを持って洗足学園に入学されたのでしょうか?英語が話せるようになりたい。オーケストラに入りたい。模擬国連に参加したい。それぞれの思いがあるのでしょう。
しかし、今、ここにいる256名の皆さんは、縁があって、これから六年間この学園で生活をともにします。そこで、最初に皆さんにお願いしたいのは、思いはどうあれ洗足学園に入学したというプライドを持ってください。そして洗足学園を好きになってください。その気持ちが学園生活を豊かなものにします。
入学に際しまして、まず、皆さんに知っておいて貰いたいことがあります。それは洗足という校名の由来です。洗足学園は前田若尾先生によって、1924年、今から86年前に創立されました。若尾先生は、敬虔なクリスチャンでした。その関係で、聖書のヨハネ伝13章の中にある一説、「最後の晩餐のおり、主であり、師でもあるキリストが、自分の手で弟子たちの足を洗い清められました。そして、互いに足を洗いあえるような/謙虚な慈愛の気持ちを持ちなさい」と教えられました。その「互いに足を洗いあえる」という言葉から、洗足という校名をいただいています。
また、「謙虚な慈愛の気持ちを育む」謙虚とは控えめで素直な心、慈愛とは他人をやさしくいたわる心、この二つの心を育むこと、すなわち謙愛の心を育むことが本校の建学の精神です。
この精神をもとにして、若尾先生は「理想高遠 実行卑近」という言葉を残していらっしゃいます。理想とはすなわち夢です。夢は大きく持ち、でも最初は、卑近、すなわち身近なことから実行しなさいということです。皆さんはどのような夢を持っているのでしょうか?きっといろいろな夢をもっていることと思います。その夢をもつことが学園生活を楽しく、有意義なものにします。
皆さんが、いだいている夢を実現させるには、心の中で思っているだけではなく、言葉するといいと思います。言葉にする事によって、それがしっかりとした形になります。そして、文章に書いてみてください。声に出して読んでください。そうすることで言葉は力をもちます。
夢を持ち、その実現に向かって努力していくかどうかが、これからの皆さんの学園生活の価値を決めるといっていいでしょう。
さて、話はかわりますが、毎年、入学式を迎えるこの頃になると、吉野源三郎さんのかいた『君達はどう生きるか』という本の一節を思い出します。
主人公は本田潤一君 ニックネームはコペル君。コペル君は、暖かな春の日、庭に出て、水仙が芽をだしているのをみつけました。同じ水仙でも、日当たりの良いところの水仙は、もう花をつけているのに、日当たりの悪いところの水仙は、まだ蕾もつけていません。
コペル君はそうしたかわいそうな水仙を日当たりの良いところに移し変えてあげました。
「もうないかな」と思って見渡すと、庭の隅の方に、3センチほど芽を出している、草花らしきものがありました。「あっ、あそこにまだ一本残っている。」コペル君は、早速、掘りはじめました。でも、掘り始めてまもなく、コペル君は意外な事に気がつきます。
普通ならば、5mも掘れば根が出てくるのに、5mほっても7mほっても、根が出てこないのです。穴はどんどん深くなっていきます。10cm11cm12cm、しかし根は出てきません。15cmを超える頃には、コペル君も興奮してきました。
この一本の小さな草が、こんなに深い土の下から地上にまで、よく頭を持ち上げてきたものだ。これだけ伸びるのに、いったい、何日かかったのだろう。きっと、この草は、まだ地面に雪が残っている頃から、春が近づいた事を知って深い土の中で芽を出し始め、そして、暗い土の中で、少しずつ、休まずに伸びてきて、やっと地上に顔を出したのだろう。誰も見ていないところで、辛抱強く、黙ってこれだけの努力をしていたかと思うと、コペル君は小さな草に「よくやった」と声をかけてあげたいような気持ちになりました。30cm近く掘った頃、とうとう根が出てきました。やせてひょろひょろのねぎのように見える草でしたが、それは紛れもなく水仙の球根でした。どうしてそんなに深いところに紛れ込んだのか分かりません。でもそんなに深いところに埋まっていても、この球根は死んでしまわなかったのです。深い土の中でも太陽の熱を感じ、春が近づけば芽を出して明るい地上に向かって、伸びてこずにはいられなかったのです。
この伸びてこずにはいられない力は、この水仙に感動したコペル君の中にも、また、今日、入学式を迎えた君たちの中にもあるのです。先生が毎年この時期にこの話を思い出すのは、皆さんの中に、輝くばかりの生命力を感じるからだと思います。
皆さんは、今日から六年間この学園で過ごします。学園での生活はきっと楽しいものだと思います。しかし中学高校時代は心も体も大きく変化していく時期で、時には悩んだり苦しんだりする事があるかもしれません。しかし、自分の夢や希望をかなえたいという気持ちや、上に向かって伸びていこうとする気持ちを持っている限り、道は開けてくるということを忘れないで下さい。そして、君たちの中にある、伸びていかずにはいられない力を信じてください。
中学高校時代を過ごすこの学園で,皆さんそれぞれの夢という花を咲かせることを心から願って私の式辞と致します。









