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校長のおはなし

 君たちの教室に「六波羅蜜(ろくはらみつ)」が掲示してあると思います。人生を自他ともに幸せに生きていくための6つの実践ですが、その中に「忍辱(にんにく)」があります。「苦難にあっても、感情に流されず、耐え忍ぶ」ということで、これには2つの方面があります。
  一つは、感情、特に怒りの情をコントロールするということ、もう一つは、苦労や困難があっても打ちひしがれずに、いかに長い歳月がかかろうとも、一旦決めたことは根気強く取り組んで、これをやり遂げるということです。今日はこの後者のことで話をしたいと思います。

 古代から江戸時代初期までの約一千年の間に書かれた日本各地の貴重な書物を収録している『群書類従(ぐんしょるいじゅう)』という文献集があります。編纂したのは、江戸時代後期の国学者である塙保己一(はなわ ほきいち)という人です。現在の埼玉県本庄市で裕福な農家に生まれましたが、7歳で病気のために失明し、さらに12歳のときには精いっぱいの世話をしてくれた最愛の母親を失ってしまいます。それからの毎日を涙に暮れて過ごしますが、そうした日々を越えて、一つの決意を抱くようになります。それは、江戸に出て学問で身を立てるということでした。
  やがて学問に専念するようになった保己一の研鑽は、情熱にあふれたものでした。ただし、目が見えないので、自分で本を読むことはできません。点字のない時代です。誰かに読んでもらって、それをものすごい集中力で聴き、覚えていくのです。保己一には多くの援助者が現れたといいます。それは学問に対する真剣な姿に心打たれたからだと思います。あるときなどは、保己一が自分の両腕を縛っていたことがありました。本を読む人がどうしたのかと尋ねると、「蚊でもとまって、手でパチンと打ったりしたら、その部分を聴き逃してしまう。だから手を縛っているのだ」と答えたそうです。保己一の思いの強さが伝わってきます。
  保己一には、大きな夢がありました。それは「日本に古くから伝えられている貴重な書物を集めて、次の世代に伝えていく」ということでした。その夢が形となって出版されたのが『群書類従』です。全666冊から成るこの一大文献集に収められている書物は1200点以上に及びます。古い書物を集め、間違いを正して編纂し、版木に一字一字掘って出版する。インターネットも、パソコンも、コピーもない時代、それは気の遠くなるような作業でした。しかし、一歩一歩の前進を根気強く重ね、実に41年間をかけてこの事業を成し遂げました。保己一の情熱の証とも言うべき『群書類従』は、日本の文化を研究する人にとって必須の参考文献となっているということです。

 あのヘレン・ケラーは、日本を訪れたときこう言ったそうです。
「小さい頃、私は母に励まされた。日本には幼い時に失明し、点字もない時代に努力して学問を積み、一流の学者になった塙保己一という人がいた。あなたも塙先生を手本に頑張りなさい。」

 誰のどんな人生にも、大小様々な困難があります。それが当たり前です。しかし、困難は自分を成長させる好機でもあります。恐いのは、困難そのものよりも、困難にくじけそうになってしまう自分の心です。だから、たとえ逆境にあっても、「ここだ!! ここだ!! ここが耐えどころだ!!」と自分自身に言い聞かせて、目の前の「今、ここ」に勇気をもって果敢に挑んでください。そして、その先に見える光を信じて、一歩一歩、根気強く歩みを進めてほしいと思います。

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